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「顧客満足第一」

この言葉を社是のひとつに掲げる企業は少なくありません。
特にサービス業では顕著だと思いますが、製造業でも少なくはないです。
私がかつて勤めたのは、企業を顧客とする製造業だったのですが、そこでもこの言葉は用いられていました。

経営者にとってこんなに都合の良い言葉はありません。
特に、ただ良き「イエスマン」であったがゆえに経営者に「なってしまった」独想力も判断力も無い者にとって・・・
ひとまず「顧客満足第一」と言っておけば、従業員全員が自発的に努力を惜しまずに働いてくれる「はず」ですから。
なので、この言葉について、表立って異を唱える者は少ないと思いますが、私個人としてはけっこう「危険」な言葉だと考えています。

私が勤めたところでは、ほとんどの社員がお客様の「要望」によって商品を開発し、「詳細な仕様」までお客様に求めるケースも少なくありませんでした。「特注品」でもないのに・・・
それにより、自分が考える必要もないし、責任も持つ必要がないのです。
社内で、誰にどう突っ込まれても「顧客満足第一ですから」のひとことで一蹴できるのです。
では、それのどこがいけないのでしょうか?

当然ですが、お客様は競合他社にも同じ要望をします。
だから、その要望に従った結果、他社に出遅れれば「不採用」です。
それがいやなら赤字すれすれの値引きを求められます。
それも、細部に至るまで先発そっくりに作ることを条件に・・・
その結果、私の勤めていたところは常に赤字すれすれだったし、赤字転落も珍しくありませんでした。

私は、そういうやり方が本当に「顧客満足第一」になっているとは一度も考えた事がありません
そもそも、お客様はわれわれを、われわれの商品の「専門家」だと位置付けています。
専門家」ならば、お客様に「なるほど、そんな見事な方法があったか!」と思わせるべきではないでしょうか?
患者に「どの注射をご希望ですか?」と訊く医者は好きですか?

ところが、同僚諸君は専門家らしいそぶりはまったく無く、ひらすらお客様に「ご希望の商品仕様をください。」と言い続けるのです。
もはやそれは「専門家」どころか、単なる「下請け」に過ぎません。

私の場合は、まず従来商品を自分で使って、使い方を詳細に説明資料にまとめます。
すると、従来商品の欠点が明確に見えてきます。
そこで、その欠点を解決した商品の開発を企画します。
その後、ネットで類似商品を探し、無ければ開発を開始します。
一度は、真顔で「他社もこういうものを作っているのか?」と聞かれて内心あきれはてたことがあります。
他社にあれば作らねぇよ!」と・・・

開発中は社内での秘匿に努めました。
特に上司陣による、お客様へのリップサービスを警戒して・・・
彼らはもっとも順調に行った場合の開発スケジュールをお客様に約束してきては、「納期遵守」で現場に無理を強いるのが得意だったのです。
私個人としては、無理なスケジュールの開発は失敗を招き易く、失敗すれば自社のみならず、それを信じたお客様にも迷惑がかかることを知っていましたから・・・

その結果は、常に誰も無理することなく失敗もせず、思った以上に市場シェアと利益率を得ることができました。
同様の商品はどこにもないのですから・・・
もちろん社内の誰もそんなやり方を認めはしませんでしたが、
私はお客様に喜んでいただけたのがなにより嬉しかったです。

どうでしょうか?
顧客満足第一」と言うのは良いですが、言いっぱなしはけっこう「危険」だとは思いませんか?

もっとも、本心は顧客満足よりも自社の利益よりも社内での自分の立場第一の人ならば「それのどこが危険なんだ?」と言うかもしれませんが・・・

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趣味も専門も電子回路という、画に描いたような理系男子ですが、世の中の「読みにくい取説」をなんとかできないものかと思い、自ら「書く側」になってしまいました。
 
 

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